2012/09/04

「天国にはネットショップなんかないよね」

天国にネットショップはないよね……

「長塚はん、このAmazonとか楽天ちゅーのは何や」
便利屋の大将がダンボールを抱えて僕に尋ねる。
「それはインターネットのショッピングですよ」
「ほー、おばあちゃん、パソコン使えたんか!オシャレなおばあちゃんやってんなあ」

遺品整理に行くとかなりの率で、こうしたまだ封を開けていないネットショップのダンボールが出てくる。
遺族達は、そのダンボールを開けてひとしきり驚いたり笑ったりする。
その中身は大量の青汁だったり、布団カバーだったり、携帯ラジオだったりと様々だ。

「まだまだ開けてないAmazonnが一杯あるで、このおばあちゃん、買い物好きやってんなあ」と大将。
『違うんだよ、大将、ほら、家の中は手すりだらけでしょ!』
僕は大将に心の中でそう言う。

おばあちゃんは多分、もう遠出の買い物は出来ない身体だったんだろう。
だから、頑張ってパソコンを憶えた。
それはそれは楽しかっただろう。
きっとおばあちゃんは、使うことが目的で買い物をしたのではないだろう。
インターネットの世界で買い物をするプロセスが楽しかったのだろう。
まだ、身体の自由がきいたころ、電車に乗って街へ出てリアルの商店街でウィンドウショッピングを楽しんだ、そんな頃の気持ちでいたのだろう。
だから、ネットで買って家に届いてたモノ、それはもう、おばあちゃんに取っては無用のガラクタだったのだろう。
それが、この大量のダンボール。

「もしよければここにあるモノは全部新品ですから、便利屋さん、使って下さい」
と遺族。
『おばあちゃんがいらなくて、あなたたちもいらなくて、そんなモノがいくら新品でも、僕もいらない』
とは、言わない。
「僕達は古物商でありますから、大事に使ってくれる人にお分けします」
と答える。

帰りのトラックで、大将が言う。
「長塚はん、今日はなんとなく機嫌、悪そうやなあ」
「すみません、遺品整理の後はいつもこうです」

インターネットがこれほどまでに普及して確かに便利になった。
でも、僕はそれが本当に正しいのかと思うと、どうもそんな気にはなれやしない。

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おばあちゃんへ
天国の商店街はにぎやかですか?
これからは、自由にショッピングが出来ますね。

そうそう、もちろん天国にはネットショップなんかはないでしょうね?





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