2012/09/16

【傘がない】便利屋さんのお仕事内容や収入、教えます!

便利屋さんのお仕事あれやこれや(最終回)

傘がない

1ヶ月ほど前から、大将と歯車が合わない。
「大将、引越しの電話がかかってきましたよ。明日来てくれって」
「明日か。やめとくわ」
「でも、いい儲けになりそうですよ」
「いいや、行かへん」
「じゃ、僕が行きます」
「やめときやめとき。あんたに何が出来る?」
こんな調子だ。

そして、遂にこの前は僕が一方的にキレてしまった。
「また、引越しの問い合わせですよ」
「いつや?」
「だから、明日」
「行かへん」
「いい加減に怠けるのはやめて下さい。僕だって慈善事業で電話を取ってるんじゃないんですから。必ず行って下さい」
と、大将
「もしかして、長塚はん、知らんのか?」
「何が?」
「明日の天気や」
「天気予報?」
「ああ、明日も雨やで、今は梅雨やで」

「そうか、普段、あんまり外の仕事の経験がない長塚はんには気が付かんのやなあ。あのな、ワシは怠けとるんと違うんや。仕事が入るのはうれしいで、そやけど、仕事が出来ひんのや」
「雨でも仕事は出来るでしょうに」
「そら、ワシらは濡れてもかまわんで。そやけど、家具をトラックに入れる間、濡れるねんで。もちろんトラックから出す時も濡れるねんで」
「雑巾、いっぱい持って行って拭けばいいじゃないですか」
「まあ、それも出来ん事はない。そやけど、ワシらも濡れとるんや。びしょびしょの服で家の中、何回も出入りせなあかんのや。そんな事したら、家の中は無茶苦茶や」
「レインコートいっぱい持って行けばいいじゃないですか」

「うーん。そしたら、長塚はん。これも気が付いてないんやなあ」
「まだあるんですか?」
「料金や。これまで一生懸命、電話を取り次いでくれた人にこんなん言うのは申し訳ないけど、やっぱりちゃんと言うとかんとあかん時期がきたなあ」
「料金が?」
「あんたの取ってくれる料金を倍にして欲しいんや」
「僕が電話で言っている料金が安いと言う事ですか?」
「いいや、それはそれで正しいんやけど、ワシらには安いんや」
「意味わからん」
「ワシらは働かれへん日が年のうち半分あるんや。雨やろ、極端に寒い日、暑い日やろ、それから盆や正月やろ、そんな日はワシらは働かれへんねん。そやからな、働ける日は世間様の倍、日当欲しいんや」
「倍で丁度……」

結局、このやりとりはウヤムヤになったまま一週間が過ぎた。
「長塚はん、仕事や仕事や、手伝うてえな」
大将のいつもの電話は鳴らない。
今日も雨が降っている。
冷蔵庫には大将の好物のレモンチュウハイが入っている。
これを持って大将の家に行くか、それとも……。

やっぱり行こう。

でも、あはは、傘がないや!

まあ、いいか濡れて行こう。

「便利屋さんのお仕事れやこれや」(完)




さて、ひょんな事から便利屋さんの手伝いをするようになった僕の悪戦苦闘の約1年。そこには依頼主の生き様や社会の歪みなど、かつて経験をした事がない様々な笑いや驚き悲しみがありました。
中でも「友達に頼めば済む事」「隣人にお願いすれば簡単な用事」など、昔(この言葉が適切かどうかは別にして)なら、僕達の様な「便利屋」などに頼まずともすむ用事を終えて思うのは「希薄な社会」でした。
だから、なるべく文中に出てくる「大将」には、その反対側の義理人情・笑い涙など、精一杯「人」を演じてもらいました。(ほぼそのままですが)
ただの笑い話や報告にとどまらず、この拙いお話が広まり、便利屋に携わる自分が言うのもなんですが、便利屋に頼らない社会に戻ればいいのにな、そんな思いを込めて書いたつもりです。


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長文ご愛読、ありがとうございました。


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